鴇 国家防衛論(Ⅱ)
米国海軍大学院に出張している間色々な教官にも紹介され、防衛についての意
見を交換する機会があったので、それら-の回答として、このニュースレク-摘
記の輩頭の平和の道という小論を英訳して手渡す事にした。これは我が自衛隊が
万一敵と戦う三つの場合について検討し、結局最良の方法はあらゆる経済的な話
し合いによって敵の上陸を実現させないという事を強調している。これを英訳し
て渡米以来ずっとお世話になっていた Dunlap少佐に文章の修正をかねて読んで
もらった。ところが少佐はこれを読んで、これを発表するのは好ましくないと言
い出した。平和論議は聖書にも示されている事だからと言ったら少佐は、たとえ
クリスチャンでもアメリカ軍人がこれを読めば憤慨するであろうという事であり、
私も止むを得ず之は断念する事とした。又海軍大学院の国家安全部門に E・ A・
olsenという助教授が居た。住む家が近かった関係で知り合いとなり、二三度お
会いする機会があった。 01sen助教授は国際政治学の専門家で日本でもその関係
で良く知られた学者のようであったので、氏に同じ小論を読んでもらった所、氏
はこれは日本の為政者、学者が言っている「政経分離」の論と結局同じことだと
いう意見であった。氏の防衛論に関するいくつかの論文をもらって読んでみたが、
その論ずる所は軍備は力だという事であり、その力が世界を支配するのが当然で
あるという考え方のようであった。
以上の例からもわかるように軍事大国の国民輿論が世界秩序の維持を従来そう-1
であったように軍備の力のみによって行なおうとしているならば、次の世界大戦
が偶発する可能性は極めて大きいと言わなければならない、そしてその時近隣の
軍事小国はその渦の中に巻込まれる運命となるであろう。二大核保有国の核兵器
が正面衝突した場合、回りの国は直接交戦国となるか否かにかかわらず重大な危
険にさらされる事となる。この場合戦場の様想は従来の大戦の場合とは全く異な
り、どちらの陣営に加担したとか、中立を守ったとか等とは関係なく、天体が揺
り動かされるという「マタイ福音書2 4章」のような状況となって地球は亡びる事
になるのではなかろうか。
ここではこれをさける方法について考えてみたい。
それは時々刻々性能が進んで行く核兵器について、それから逃避するのでなく
逆にそれらの効果を明細に調べ明かして、それが使用された時の状況をつぶさに
模写( Simulate)することであろう。従来戦争による被害およびその残虐性に
ついては色々な所で発表され宣伝されて戦争防止の助けにしようとして来た。
第二次世界大戦での残虐行為、ベトナム、カンポジヤでの虐殺行為、そして広
島長崎での原爆による被害、等々、しかしそれによって戦争廃止の国際輿論が起
こされる傾向は見られない。
今までの戦争は一方が敗者のみじめさの中にあっても他方は勝者であって、何
れの国もその勝者を待望していたからではなかろうか。
従来核兵器の偉力と、二大核所有国が正面衝突した時に起る地球の破壊と惨害
について、概念的には報じられていた。しかし本当の核戦争は未だ起こっておら
ないし、被爆国日本の主張も原爆投下がその後の日本の発展に及ぼした影響から
考えれば、他国から見て拡大宣伝と見られるかも知れない。従来の心情的反戦論
や抽象的な感傷論では軍事大国に核凍結を同意させる事は出来ない。若し二大核
所有国の正面衝突が地球の破滅に到るのならば、その道程を一つ一つ分析解明して説
明する必要がある。今やコンピューターの発達によるSimulation技術は長足を
進歩を遂げ、天文・地文・気象、から始まって警戒整備面についても経済発展の
面についても広範韓に利用されている。この技術によって防衛面、特に核兵器の
各部門部門に及ぼす条件,影響を推定比較して核戦争の結果を正確に予測するな